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箱の中にあったのは、精巧なノートだった。
「これは…棋譜?」
「そう。キミの棋譜だ」
オレは一瞬で、目の前が真っ暗になった。
もしかして、塔矢はまだ佐為との対局を忘れられないから…
「これって…」
予想外に、最初の一頁は、オレと塔矢のプロでの初対局だった。それだけじゃなく、周りにびっしりと塔矢のコメントが書いてある。この一手が肝要とか、この一手は思いつかなかったとか…
そして最後に、こう書かれていた。
「間違いない、キミはボクの生涯のライバルだ」
塔矢………
次のページも、オレの公式戦の棋譜が一つ一つ、そして塔矢の感想もいっぱい記録されてる。当時「酷い碁だ」と言われた対局も、ちゃんといい手を指摘してあった。
全部…オレの碁だ。「進藤ヒカル」の碁だ。
塔矢がいつものようにオレを真っ直ぐ見ている。
「最近のキミ、時々不安そうにフラフラしてたから、伝えたいんだ。ボクはキミも、キミの碁も、キミの全てを愛してることを」
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